【熊本のいま vol.1】災害の度によみがえる宿〜 “蘇山郷”館主永田祐介氏インタビュー~

先日、防災ガールの活動の一環として、熊本の阿蘇へ行ってきました。

第三弾となる今回の熊本支援は、報道が減りつつある地域の現状や復興の様子を現地の方からお聞きすることが目的のひとつでもあります。

今回、宿泊先の温泉旅館”蘇山郷”(そざんきょう)の館主である永田祐介(ながたゆうすけ)さんにお話をうかがうことができました。

なんとこの旅館、あの与謝野鉄幹・晶子夫妻も通ったという格式高いお宿なんです。

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(写真:館主の永田祐介さん)

――震災が起きる以前、”蘇山郷”はもともとどのような宿を目指していたのですか?

永田さん:4年前に水害があり、当館も甚大な被害を受けてしまいました。食事会場などは特に被害が大きく、当時の現状を見てどうしようかと考えたときに、リノベーションをしようと決めたんです。

復旧が難しいところは壊すという選択をし駐車場に、元々30部屋あった客室は22室へ減らし、その上で今後の方向性を考えました。やはり、これから先は外国からの観光客が増えるのではないかということで、畳に椅子を置いたり、デザイン性の高いものにすることで個人の外国人観光客が利用しやすいような旅館を目指しリノベーションをおこないました。

――なるほど。災害をきっかけに大きく舵を切ったということですね。リノベーションの結果はどうだったのでしょう?

永田さん:そうですね。結果としましては、外国人宿泊者は取り組みを行う前は年間200人だったのが、取り組んで初年度が1,200人になり、2年目は2,400人、更に昨年は3,200人もの外国人観光客の方が宿泊してくださいました。だいたい全宿泊者の25%くらいは海外からのお客様となり、日によっては50名中45名が海外からのお客様ということもあります。さらにいえば、基本的にツアー等の団体受け入れはしていないので、すべてが個人でのご予約のお客様となっています。

また、呼び込みについては、SNSで拡散するような「口コミ」をメインとするようにしました。海外サイトのレビューで評価をいただいて、海外からでも個人のお客様が来てくれるようになったのが大きな効果だったと思っています。お客様のリアルな声を参考にサービスの品質向上を積み重ねてきた結果、「阿蘇に行くなら蘇山郷」という認識が少しずつ根付いてきてくださったのかもしれません。

その他にも、サイクルツーリズムとして大自然の中で体験できるアクティビティも用意したり、近隣のサイクルスポットや、その時期に見れる景色をブログで発信したり。そこから話が繋がっていき、漫画「弱虫ペダル」の劇場版の物語の中にも登場させていただいて、そのように漫画から入ったライトな層からプロフェッショナルなどのアスリートまで、サイクルに関してもさまざまな方に利用していただいています。

そういった部分を含めて、個人のお客様を中心として順調に予約が増え、特に今年は最高益を狙えるタイミングでした。

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(写真:蘇山郷入り口)

――そんな中、4月14日、16日の震災が起こった訳ですね。直後はどのような状況でしたか?また、そこから3ヶ月間はどのように活動してきたのでしょうか?

永田さん:4月14日の地震では宿自体への被害はなかったのですが、外国人宿泊者の方が軽いパニックを起こしてしまったので、情報を集めながらもそのケアに努めていました。16日の地震発生時は25名のお客様が宿泊されていました。地震直後に水道も電気も止まってしまい、ライフラインがすべて機能しない状態になりました。

宿側としてもできることが限られてしまい、「お客様をどうするのか?」という状態だったので、客室ごとに点呼をして、二次災害を防ぐためにとにかくまずは宿の外に出てもらいました。その後、毛布をお持ちしたり、マイクロバスを用意してその中に避難をしました。翌日以降はライフラインが何もないので、予約はすべて断りました。

宿のダメージとしては、客室の中や廊下、外壁も含めてクラック(ひび割れ)だらけ。あとは梁がずれていたり、瓦がずれて雨漏りしてしまったりと、かなり甚大な被害でした。
余震がある中残って自分たちで直していましたが、やはりそれだけでは難しかったです。

4日後に電気が復旧したのですが、泉源から温泉をくみ上げる地下パイプが地下50mほどで断絶し、温泉が出なくなっていました。

そこで、まず新しい温泉を掘るというところから始めようと思いました。本当は色々な手続きが必要なので半年ほど申請に時間がかかるのですが、非常事態なので緩和してもらえるよう駆け回り、6月1日から掘り始めて、6月18日には新しい温泉が出てくれました。

あとは、大工さんの工事の目処がたってからスタッフを呼び戻し営業の準備をおこなう一方で、急ピッチでやってもらうために大工さんには泊まり込みの合宿工事で作業を進めてもらっていました。

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(写真:震災後リニューアル時 ※出展:http://kikuchinokoto.blog88.fc2.com/

――その後7月16日に再オープンされたと聞きましたが、今後の課題などはありますか?

永田さん:震災から3ヶ月後の7月16日に何とか再オープンができました。けれどまだ瓦や塀など修復作業は残っており、年内までかかる見込みです。

これまで来てくださっていた外国人宿泊者に関しては、宿泊者の八割が使用していた公共交通機関、その中でも最も利用が多かったJR豊肥本線が立野で寸断され止まってしまっているので現状での来訪は厳しいと思っています。

実情としても、福岡経由でレンタカーなどで来てくださる方のみとなってしまい、現在では1日1組程度となっています。復旧の見込みがつかなければ、以前のように来ていただくのは難しいのかもしれません。

そんな現状から考えて、宿を守っていくためにも、日本国内の方にたくさん来ていただけるように工夫をするしかないと思っています。

今年の8月は昨年の八割くらいの人数を目標にし、昨年度九割の利益を見込むために、単価を上げることで何とか確保しようと考えて予測をたてています。ただ、単価を上げるにしても、「震災で厳しいので仕方ないんです」というのはお客様に対して言い訳にしかなりません。

お値段に合った満足度を感じていただけるよう、お部屋もリニューアルし、チェックアウトの時間も10時から11時に延ばし、以前から要望が多かった喫煙室を作ってお部屋は禁煙にしたり、そうした今できる工夫や中身を含めて考えていきました。

単純に100を100に戻すだけでは「復旧」でしかありません、それを「復興」につなげていくためには、どこにプラスアルファを持ってくるかというところが重要だと思っています。

 

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(写真:日本庭園の奥の塀は修復中)

 

――最後に、私たちのように県外の地域の人ができること、あるいは伝えたいことなどはありますか?

永田さん:まずは今の阿蘇を見に来ていただきたいと思っています。「不自由なんだけど、今までとは違う」というところを見てほしい。わたしは、阿蘇は蘇ると思っています。阿蘇の蘇、蘇山郷の蘇は”蘇る”という意味です。

太古の昔よりさまざまな災害があったと思うのですが、それを乗り越えて在るのが、今のこの綺麗な阿蘇だと思います。年月はかかるけれども、その過程に我々がどう関わっていけるかということなんだと思うんです。

今の状況を知ってもらう中で、これから何度も来ていただいて、変化を見ていってほしいです。復興には10年かかるかもしれないけれど、きちんと立ち上がった時には、それがシンボルとなるように、崖崩れで緑が剥がれてしまった牧野が緑に変わっていったり、橋がかかったりする過程を見ていただきたい。今回の地震に関して、現状を見た方が想いを寄せて繋がっていけるのではないかと思っています。

また、今取り組もうとしているのが、自転車を使って、きちんとガイドをつけて1日かけて阿蘇を回ったりというアクティビティ。お年寄りにはバスで回れるようにするというように、このエリアを点ではなく、面で捉えて被災地を見てもらうのも一つの観光だと思っています。そういうアクティビティを地元のボランティア団体や友人の会社とも協力しながら取り組んでいきたいと思っています。

また、こうして実際に来ていただいた体験をSNSやレビューなどを通じて発信していただけることが、また次に訪れる人につながるのではないかとも思います。

ぜひ少しでも多くの方に、一緒に復興の過程を見ていただきたいと思います。

 

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(写真:今回の取材で宿泊したメンバーと永田さん)

今回取材をおこない、この蘇山郷のように、災害が起きる度に新しい道を見つけていくことで、マイナスをゼロに戻すのではなく、結果的にマイナスからプラスに持って行くための考え方というものを知ることができました。

また、今だからこそ阿蘇に行くことの意味として、「復興大変だね?」と外で言っているのではなく、実際に現地を見て、地域の人やもの・ことに触れることで今の現状を共有し、一緒にその変化をこれから見ていくことができる可能性をすごく感じました。

震災直後の今しか見れないものが、阿蘇にはあります。

<館内の様子>

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(写真:前菜)

 

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(写真:お造りと馬刺しに辛子蓮根)

 

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(写真:鮎の塩焼き)

 

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(写真:あか牛のステーキ)

 

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(写真:宿泊当日夕食のメニュー)

 

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(写真:ロビーは老舗旅館の雰囲気とモダンなテイスト)

 

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(写真:歴史資料が並んでいる)

 

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(写真:バー・ラウンジ)

 

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(写真:清風部屋前)

 

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(写真:故里の部屋内)

 

 

 

ちなみに、新しい温泉は以前の温泉と比べて、鉄分・イオンの含有量が増えたそう。以前の温泉に含まれていたメタケイ酸の保湿効果も変わらず、むしろ保温効果やすべすべ感はワンランクアップ!
塩素消毒などもしていない源泉かけ流しの贅沢なお湯が楽しめます。

インタビューさせていただいた永田さんは本当に素敵な方でした。
熊本の阿蘇に来た際には、ぜひ本当に素敵な宿”蘇山郷”に行ってみてください!

 

■information

蘇山郷
URL:http://www.sozankyo.jp/

宿の名物ブログ「コルナゴ部長の阿蘇天空の旅」
URL:http://kikuchinokoto.blog88.fc2.com/

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