「新しい働き方」こそ「新しいオフィスの防災」

もうすぐ東日本大震災から6年。あの時みなさんはどこで、なにをしていましたか?

家でゆっくりしていた方もいれば、学校が春休みで友達とカフェにいた方、仕事をしにオフィスにいた方などそれぞれだったのではないでしょうか。

これまで、「家や学校で被災した時にどうしたらいいか」ということはよくテレビでも伝えられてきましたが、「オフィスで被災したらどうするか」ということは会社の計画などによってそれぞれ違うため、あまり情報として出てくることがなかったかと思います。

そこで今回、実際にオフィスが入っているビルの火事によって被災した会社の社員さんにインタビューをさせていただきました!
いろいろ話しづらいことも伝えてくださり、これはまさにオフィスの防災について知りたい方々の今後の参考になるような伝えるべき情報だと、一緒に話をしながらまとめてみました。

 

2017年2月6日(月)のお昼前、愛知県岡崎市にある3階建てビルの3階から出火

夕方ごろ鎮火したが、3階は全焼、2階は水損、1階は一部水損。

そのビルの2階に、今回お話を伺った「株式会社ハーティスシステムアンドコンサルティング」さんが入居していました。激しい水損からオフィスが完全に使えなくなり、1階は多目的スペースとして活用されていたものの、エリアの3分の1が水損。その時の様子から、新しい「オフィス防災」をみつけました。

 

発生直後の行動(2月6日の発生直後)

毎日11時半から開催している、全社の情報共有会議を1階で行っていたときのこと。

「ドタドタバタバタ」という子供が走り回っているような大きな音が何回か続いたかと思ったら、突然ビルが揺れ、「地震かな?交通事故かな?」と思った瞬間に、女性のただならぬ叫び声が聞こえたそうです。その瞬間から、入口付近にいた同僚が一斉に外に飛び出します。叫んだ女性は3階の出火元にいた方で、その方の話を聞いてようやく、そこで初めて火災が発生していたことが分かったそう。

「消火器!」と同僚が叫び、会社の消火器を持って数人の社員が出火元の3階へ走っていきました。残った社員は、パニックになっていたその女性に落ち着いてもらうために声をかけ、救急箱を持って来たり、お水を出したりしていたそうです。3階へ消火に行った社員が戻ってきて、「黒煙で何も見えないし、消火器で消せるレベルではない、消防車を呼んだ」と報告しました。

その後は、誰が指示するわけでもなく、同じビルに入っているテナント業者に避難するよう伝える人、大家に連絡する人、社員の貴重品(財布や携帯・PC類などのテレワークセット・コート)を運び出す人、パソコン等のサーバーをシャットダウンする人、消防車を誘導する人、黒煙を吸った人に水を買ってくる人など、さまざま…。

個々人の判断によって、それぞれが状況を判断し自分がいますべき役割を見つけて行動したそうです。

 

一部の社員が「避難場所に集合!」「残っている人はいませんか?」と声がけをし、普段行っていた避難訓練で知っていた“指定避難場所”にそれぞれがバラバラになって移動しました。避難場所に集合した後は、点呼をし社員の安否確認、モバイル端末から“全社配信メール”で他拠点と外出中の社員に状況報告、会社宛てにかかってくる外線電話を携帯で受けられるように転送設定し、最低限すべきことを判断し実行に至ります。

しばらくすると消防車が到着し、消火活動が開始。そして、事態を察した近所の銀行からの厚意で使用していない会議室を貸すと申し出があり、行き場を失った社員全員で移動し業務のできる環境を得ることができました。その後、代表と役員は午後に予定していた客先の元へ向かい、現場の指揮は普段会社の庶務や広報・採用を担っている事業企画部が行うことになったそうです。

 

場所を移動した後の行動

環境として業務が行える場所を得た後は、懸案事項の洗い出しを社員全員でクラウド上で同時編集できるExcelに書き込み。営業や開発に携わる社員は“テレワーク”で通常業務に戻り、指揮をする事業企画部は対策本部を設置。

会議室のホワイトボードに「火が消えても勝手にオフィスに入らない。電気は絶対つけない」などの禁止事項を記載し、洗い出された懸案事項の対策を立てたとのこと。また、手の空いている社員で社内向けのSNSに設置された「安否確認」のチャットに、現状の様子を投稿し情報共有を実施されていたそうです。

16時前、消防から鎮火の連絡が入り、社員全員でオフィスの中に戻ったそうです。しかし、ビル全体に焼け焦げたような強い臭いが滞り、メインとして使用していた2階は水浸、1階は3分の1が水浸していました。

残りのエリアはなんとか無事だったそうですが、出火元の3階に残っている水が天井から落ちてくるため、2階の機器や家具を被害の少ない1階へ移動。ひと通り作業が完了したのが17時半、これ以上は電気がない中での作業は困難と判断し、一部の社員を除きこの日は解散したと聞きました。

 

火災鎮火後、事業再開に向けてどう体制を整えたのか

 

火災当日の夜

残った社員のうち1班は、次の日の業務が少しでもやりやすいよう、外部からアクセスできる”ネットワーク環境”を構築しました。もう1班は、オフィス復旧に伴うやることの整理、保険会社への連絡、電話の代行依頼などを実行。

21時ごろ、全社配信メールで状況まとめや、明日からの動き、体調が悪くなった人は会社へ報告すること、病院へ行く場合は災害指定病院へ行くことなどを共有されたそうです。

 

2月7日 – 火災の翌日

翌日7日(火)は、有志を募ってオフィスの片づけを行ったそうです。

まず、火災保険を申請するために必要な片付ける前の被害状況を報告するためにオフィスの状態を写真撮影。その後、2階の水を排水するチームと、業務におけるお客様の預かり品を棚卸するチームに分かれて作業を開始。11時半からは、近所の銀行が貸してくれた会議室にてオンラインの全社会議を開催。オフィスの復旧状況について、他拠点や外出者と共有を行いました。

午後からは、営業や開発に携わる社員は貸し会議室で通常業務に戻り、事業企画部はオフィスの1階で復旧作業を継続。消防署・保険会社・市役所・電気工事会社・電話会社との手続きや、明日から社員が働ける場所の確保を行いました。

その時ネックだった「業務に必要なFAXの受信」は、一時的に電力を回復して他拠点へ転送設定することができ、電気以外のライフラインはとりあえずの対応が完了したそうです。

 

2月8日〜2週間後 – ライフラインの復旧

8日(水)以降も、事業企画部は火災の事後処理や片づけを実施。営業や開発の担当者は、近隣の貸し会議室、オフィスの1階、名古屋支社、在宅勤務など、最も生産性が高くなる働き方・場所を各自で選べるようにし、業務を実施していたということでした。

9日(木)の夕方には電気が復旧。実際に使用可能なのはオフィスの1階だけではあるものの、暗くなる夕方以降も仕事ができるようになり、防犯システムも使用可能になりました。週末の11日(土)には、もう少し働きやすいオフィスにするため、事業企画部で整理整頓とレイアウト変更を行ったそうです。

火災から1週間後まではほぼ同様の環境で業務を継続。2週間後には、電話回線とネット回線工事も完了し、事務所としての機能がほぼ元通りになったといいます。火事以降中止していた、内定者のインターンも再開できたそうです。3週間後には、プリンタの移設やFAX送受信もできるようになり、ビル全体の改修工事が始まるまでの仮オフィスが完成しました。

 

発災後、落ち着いて行動ができた理由は

防災ガール田中:なぜ発災後みんな主体的に行動できたんですか?
社員の方:誰かに指示されなくても、自分の頭で考えて行動できる力が全員にあったからだと思います。

もちろん、健康な体があれば、誰だって考えて行動することはできる。ただ、組織で動く以上、「指示する人」と「指示を受けて行動する人」の役割分担は存在してしまうもの。この役割分担がはっきりしすぎていると、いつも指示を受け行動する人は、つい指示を待ってしまい、行動できなくなってしまう。

その点、今回被災された株式会社ハーティスシステムアンドコンサルティングは、年齢・性別・役職に関わらず、自ら考えて行動することが社長から常に推奨されていて、業務においても自分で考えられられるように先輩社員が後輩へ教育するようにしていたり、社内でのイベントの企画も社員に任されていたりと、いろんな役割を体験できる文化があるそうです。この文化や経験があったから、火災という現象に対しても思考停止になってしまう方がいなかったのではないでしょうか。

 

防災ガール田中:他にも具体的な普段やっている施策はありますか?
社員の方:個々を知り合う機会をとても多く作っています

災害発生時、見た目はみんな落ち着いていたけれど内心は不安や動揺もあったという。しかしそれでも、落ち着いた振る舞いができたのか。それは、あらゆる枠組みを超えた信頼関係と絆があったことが大きいと言える。普段からお昼をいろいろな方と食べるようにしていたり、個々人を知り、濃淡はあれど全員と付き合いがあり、日頃からまんべんなく社員同士がコミュニケーションをはかっているという。

 

株式会社ハーティスシステムアンドコンサルティングの社員構成>
■社員数
社員20名+役員3名

■部署ごとの人数
社長 1名、事業統括部 2名 経営計画室 2名、A事業部 13名、B事業部 4名、C事業部 2名 事業企画部 3名
■男女比
男性 17名 74%、女性   6名 26%

■年齢比
20代 7名 30代 13名 40代 1名 50代 2名
■役員やマネージャーとスタッフの人数比
役員 3名 マネージャー 6名 スタッフ 14名 (2017年3月7日時点)

 

「仕事をする場所を変えて事業再開させる」という選択をした理由

防災ガール田中:場所を変えてもなお、事業再開させたのはどうしてですか?
社員の方:お客様にご迷惑をおかけしないためであり、自社の利益確保のためです

「どこかに移って事業を再開しなくては!」というよりは、いつもの延長で自然と仕事を再開したそう。オフィス以外の場所で仕事をするのは、特別なことではなく、ICTを活用した働き方改革に、長年力を入れてきたことが功を奏し、「働く場所を変える」ことそのものが「いつもの日常」だった。

外出先で“モバイルワーク”をしたり、“サテライトオフィス”で仕事をしたり、家庭と仕事を両立しながら“在宅勤務”をしたり。さまざまなシーンで働いてきた経験があったからこそ、自然と事業を再開することができたと思うそう。

 

今思うとやっていてよかったこと、やっておけばよかったこと

防災ガール田中:被災を経験し、やっておいてよかったなと感じることを教えてください!
社員の方:「“場所を手放す” “働き方を手放す”という働き方の再考」です。

火災に遭う前から、どこでも働ける環境づくりには力を入れていて、働き方を改革することがBCP対策に有効であることは分かっていたそう。ただ、本当にそのような状況下になった場合、オフィスなしでどれくらいのパフォーマンスを出せるのか?それは正直なところ未知数だった。

けれど今回あっさり業務を再開できたため、自分たちが一番驚いていたそう。働く場所や時間を固定させないということは社員の自由度や裁量権を高めモチベーションを高めるだけでなく、BCPにもつながるのだ。

 

防災ガール田中:逆に、これだけはやっておけばよかったと思うことはありますか?
社員の方:防災訓練はやって良かったけれど、訓練メニューはぜんぜん足りていませんでした。

基本的には「逃げる」という避難していくための訓練は実施したけれど、避難したあとやどう復旧していくかという訓練をあまりしていなかったそう。逃げる時の持ち物しかり、事業を継続させるために役員だけでなく社員一人一人はなにをどう行動を起こしていけばいいかみんなで考えていくことはとても大切。

今回インタビューさせて頂いた方が特に必要だと感じたのは、「モバイルWiFi / WiFiルーター」だそう。事業継続において、オフィスの復旧だけでなく営業や開発担当者はいかに役割を継続できるかが大切であるため、少し場所を移動した先でのインターネット接続環境の確保にはとても重要なアイテムだといえる。

 

 

想像以上に役に立つのは、「アウトドア×オフィス」の体験

働く場所を固定せず、普段から様々な時間・場所で働くことは、災害時に「会社」の事業継続だけでなく「社員」の事業継続の多くを担うことがあります。今回の火災では、普段使っているオフィス以外の場所でも仕事ができる体制ができていたから、「会社の復旧」とは別軸で「社員の仕事の復旧」のスピードが早待ったと言えると思います。

所持するものや固執するものが多ければ多いほど、それは災害時の復旧・復興のスピードを遅めます。極端に言えば、何も所持していなければ、何も所持していないことが普通になるためその瞬間に復旧・復興できるわけです。

 

まずははじめの一歩として、キャンピングカーをオフィスにしたり、アウトドアの場で仕事をしてみてはいかがでしょう!
いきなり会社とは違う場所で働くことが少し忍びなかったり、運用が難しそうと感じるのであれば、一度イベント的にでも会社みんなもしくはチームで、テントなどで簡易オフィスを作り、自然を感じながらワクワク働くことから始めてみてもいいかもしれません。

 

■「アウトドア×オフィス」体験のメリット

①あえて少し不自由な環境でも仕事をする経験が緊急時のストレス軽減につながる 

②アウトドア用品や電気がなくても使える暖房・照明器具は災害時にも活用できる
③強いチームを創るのに最適

 

一緒にテントを設営し、食事をとり、会話をして、仕事をする…。そんなアウトドアの場をオフィスにしてしまう働き方を通じてさまざまな共同作業を行うことで、人と人とのつながりやチームの結束力が高まるかもしれません。

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自然災害は急に起きるものではなく、地球の中で徐々にエネルギーが溜まっておきる地震や日頃の掃除不足からくる火災など、実は歯磨きを怠ることで少しずつ虫歯になっていくのと同じようなこと。日々の暮らしの積み重ねが災害発生時にも影響します。

緊急時のためだけの対策ではなく、普段をいかに充実させるか、普段からいかに積み重ねていくか、育んでいくか。

世界有数の災害大国日本で暮らす私たちだからこそできる知恵をもって、創意工夫をしていきましょう。

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