[生き抜く知恵]vol.3 インクルーシブリーダーシップ

滋賀県長浜市のとある場所にある、生き抜く知恵の実験室WEEL。
ここでは日夜「生き抜く力」について考え、時にそれらを身につけるための実験やチャレンジや発信がおこなわれています。

「防災」って、きっとこれからの時代においては自然災害に対するだけのものじゃなく、人生そのものを生きていくための「生き抜く力」のことになる。そんな仮説のもと、生き抜く知恵を学んでいく暮らしの中で、特色あるゲストを招いての特別研修もおこなっています。

今回は、「インクルーシブリーダーシップ」
わたしたちが学んだ生き抜く知恵を少し、ご紹介させてください。

 

生き抜く知恵のかけら

1.文化適応能力を身につけること
2.きれいごとじゃない、真実を知ろうとする力
3.わからない時には「直接聞く」という力

 

知恵の持ち主は山田小百合さん

山田小百合(やまだ さゆり)

1988年生まれ。重度知的障がいを伴う自閉症の兄と弟の間で育つ。東京大学大学院にて、インクルーシブデザインや学習環境デザインの切り口から、障がいのあるなしに関わらないワークショップに関する実践研究を行う。その後、障がい者や高齢者、マイノリティ等、誰もが包摂される学びの環境づくりを実践するべくNPO法人Collable設立、代表理事。

 

山田さんが立ち上げたNPO法人Collableが取り組むのは「ダイバーシティ*」、「インクルーシブリーダーシップ」。
最近注目されているテーマではありつつも、その意味を深く理解し実践できているところはまだまだ少ない。

彼女の取り組みは、障がいのあるなし関係なく、様々な人が集う場のデザインをする活動だ。「関係性のケア」という視点から、多様な人々が集うコミュニティをどのようにデザインしていくのかを実践研究を行いながら生み出している。

今の世の中にも、障がいのある人たちへのケアはたくさんある。それなのに、彼ら彼女らはやっぱりどこか生きづらそうに見える。そして、その周りの人たちも同様に生きづらそうだと、彼女がそう気づき始めたことがこの事業を始めるきっかけだった。

 

ダイバーシティ
多様性にも置き換えられる。広く様々な種類の人が存在すること。さらにそれを理解し適材適所・人材活用をする意味として使われることも多い。

 

NPO法人Collable
どんな人にも、豊かなつながりが絶えない社会に。
http://collable.org/

 

 

「ために」から、「ともに」

 

きれいごとじゃなく、目の前の真実を見たい

世間ではよく「ダイバーシティ」、「障がいのある人を理解しましょう!」といいつつ、実際のところはそれらとかけ離れた機会があったりするーー

山田さんは、家族に障がいのある兄弟がいたことがきっかけで、自分自身にとっては彼らの存在が当たり前だった。「障がい者」としての存在ではなく、「兄弟」としての存在が当たり前だったのだ。しかし小学生の頃、その兄弟の言動に周りの友人たちが驚くことがあり、「自分にとっては当たり前の存在である兄弟も、普段接していない人にとっては驚いてしまうということがあるんだ」ということを知った。

同時に、「そりゃそうか」とも思ったという。山田さんにとっては「普通」の彼らの言動も、普段から接し慣れていない人たちにとっては「異質」となる。そうなると、その人を見る時に、人柄や人となりよりも先に「障がい」というラベルが目につくようになってしまうのだ。

 

現在、世の中には障がい者をサポートするような支援はたくさんある。それぞれがみんな「これが正しい!」と言って活動をしているが、世の中の受け入れる準備がまだまだ整っていなかったり、一般人にとってはむずかしすぎたりすることもある。その現実と支援者との関心度や状況の乖離を感じたとき、既存の施設ややり方とは違う、もっと違うアプローチがあるのではないかと考えたという。

「障がい」といっても、そこには多種多様な違いがある。そしてその「人」だって千差万別だ。そこで、ひとくくりに「障がいのある人と関係をつくる」というのはあまりにもハードルが高く非現実的なのではないかと考え、ケースバイケースで”関係性をデザインする”必要性があると気づいたのだそう。

 

違いを見るのではなく、聞けばいい。知ればいい。

Collableでは、障がいをもった人をワークショップの「メンバー」にいれることもある。普段、障がいのある方と接点がない人にとっては「視覚障がい者」というイメージからどうコミュニケーションを取ればいいのか、どうサポートしたらいいのか考えてしまいがち。そしてそこには、サポートする側とされる側という関係性が生まれてしまう。しかしCollableの現場では違った。

視覚障がい者をいれて”絆創膏”のワークショップを行った際、視覚障がいだからこその気づきとして「お菓子の箱と間違えてしまう」「中に何が入っているのかわからない」などの意見がでてきた。見える人も見えない人も「一緒に新しい絆創膏のデザインを考える」という目的や前提があることで、視覚障がい者がチームに入らなければわからなかったことを知ることができる。そしてこれまで「サポートすべき対象であった人」が、その瞬間に対等にチームとして話し合いをできる人になる。

本人に聞いたらいいのに――

山田さんの周りには、『聞かないで知識だけで決めてしまう人』がまだまだ多いそうだ。けれど、「障がい」というものはそれぞれの人が持つ特徴であり、一つの「違い」なだけであるからこそ、普通に友人や家族と話す時のようにして「なんで?」や「どうしたらいい?」を聞いたらいいのではないかと彼女はいう。「障がい者」とコミュニケーションをとりたいのではなく、目の前の「あなた」とコミュニケーションがとりたいのならば、知識の中の正解よりも目の前のその人の中にしかない「その人にとっての答え」を求める方がいいのではないか。そういう意味では、「聞く」力を育てるというのが重要だなと考えていると山田さんは語る。どうでもいい質問でもいいから、「聞く勇気」を育てる訓練をしていかなければならない。

 

これから必要なのはインクルーシブリーダーシップ

昨今、どんなコミュニティ・現場でも強いリーダーシップが必要とされている。「強いリーダーシップ」と聞くと、先陣を切って声をあげ事業を引っ張り、メンバーへの指示をし前に進めたりするリーダーが想像できる。

しかし、この種のリーダー旧来型のリーダーはメンバーの自主性や決断力を止め、リーダーのキャパシティでそのコミュニティやチームの最大値を決めてしまうことにもなりかねないというリスクもある。

そこで、これから求められているリーダーシップとは以下のようなリーダーである。

 

■サーバントリーダーシップ  
リーダーがコミュニティのメンバーをサポートすることで組織の潜在的な力を引き出すタイプ。

■インクルーシブ・リーダーシップ
「Include=巻き込む」からわかるように、優秀なリーダーがリーダーシップをとるのではなく、多種多様なバックグラウンド・価値観を持った人、意見が合わない人たちなどみんなを巻き込み、それぞれの力を引き出して組織を動かしていくタイプ。

 

山田さんは、障がいの有無に関係なく、そして多岐にわたるクライアントや関係者の中でゴールに向かって走っていく、その「巻き込む力」を身に付けることがこれからの時代に必要だと考えている。

 

文化・環境への適応能力が鍵

私たちが足を止め、目をつむっていても時代は驚くほどのスピードで変化している。環境は変わり、時代は変わり、人も変わっていく。
そのこれからの「変化の時代」においてどんなコミュニティ・どんな時代・どんな環境になっても対応できる力は生きていくための鍵になるのではないだろうか。

山田さん、そしてCollableが「障がい者支援」と名を売って活動するのではなく「インクルーシブリーダーシップ」として展開していくのには、本質的に「人」と「人」であるという視点と、そんなこれから先の未来を見据えた上での理由があるのではないだろうか。

そもそも障がいはそれぞれの人がもつ一つの違いであるだけ。そしてこれから先の時代はきっと、もっと多種多様な人たちの中で、ルールの違う場所で適応し共に生きていかなければならない。インクルーシブ(巻き込む)に一人一人がリーダーシップをとって参加していく、それこそがこれから生きるためには重要な知恵であり力だと感じた。

 

他にも生き抜く知恵の実験室WEELでは動画配信など様々な取り組みを滋賀県長浜市さんと行なっております!ぜひ下の画像をクリックしてご覧ください!

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