[生き抜く知恵]vol.4 LGBT

滋賀県長浜市のとある場所にある、生き抜く知恵の実験室WEEL。
ここでは日夜「生き抜く力」について考え、時にそれらを身につけるための実験やチャレンジや発信がおこなわれています。

「防災」って、きっとこれからの時代においては自然災害に対するだけのものじゃなく、人生そのものを生きていくための「生き抜く力」のことになる。そんな仮説のもと、生き抜く知恵を学んでいく暮らしの中で、特色あるゲストを招いての特別研修もおこなっています。

今回は、「LGBT」
わたしたちが学んだ生き抜く知恵を少し、ご紹介させてください。

 

 

 

 

生き抜く知恵のかけら

1.「生きづらさ」を「表現するためのヒント」と捉える
2.「意味合い」よりも、後からでは付け加えにくい「直感」を大切に
3. 人それぞれが生きやすく生きるということ

 

 

知恵の持ち主は太田尚樹さん


太田尚樹(おおた なおき)

神戸大学卒業後、リクルートに入社。大手結婚式場の集客・出店戦略のコンサルティングを担当。その後退社し「世の中とLGBTのグッとくる接点」となるようなアート、エンタメコンテンツの企画・制作を行う『やる気あり美』を発足。自身もゲイ。また現在はフリーランスとして、ブランドデザインや雑誌連載など、幅広く活躍中

 

「やる気あり美」を発足し、現在クリエイティブディレクションを中心として幅広く活躍中の今回の生き抜く知恵の持ち主、太田さん。

彼は、セクシュアルマイノリティーとされる“LGBT”当事者たちの抱える生きづらさをどうにか解決したいと立ち上がったが、LGBT研修のような分かりやすい啓発活動や社会制度変更を訴える政治的活動というアプローチではなく、「LGBTとセクシュアルマジョリティ、いわゆる”フツウ”の人)の違いを知ってもらうことよりも、違わないことを感じてもらう」ということに重点をおいて活動を展開している。

所謂“オネエ”でも人権運動家でもない、LGBT当事者の人気者となることをめざし、次世代の当事者とその家族や友人が「LGBT」ときいて普通の人とイメージする社会づくりに貢献したいという。

 

 

やる気あり美
世の中とLGBTのグッとくる接点をもっと
http://yaruki-arimi.com/

 

 

「生きづらさ」を「ヒント」に変える

 

LGBT当事者の生きづらさ

LGBT当事者の中で、過去いじめを経験したことがある人は50〜70%いると言われ、セクシュアルマジョリティと比べると自殺リスクが6倍あるというデータがある。

LGBTと聞いてイメージするような虹色のアイテムを身にまとったたくさんの人が楽しそうに歩くパレードや、ゲイバーなどのある「新宿二丁目」のコミュニティや、マツコデラックスさんやIKKOさんのように「有名人」となって活躍している、ポジティブできらびやかなイメージとは別に、誰とも変わらない平凡な暮らしの中でカミングアウトをしていない人もいれば、カミングアウトできる人やコミュニティと出会えず苦しんでいる人もいるのが現実。

渋谷を筆頭に広まり新しい制度となった「同性パートナーシップ制度*」に関しても、制定されてから2年で渋谷区で24組、全国6自治体あわせて134組(2017年10月末現在)しか届出を提出していないという現状があると太田さんは語る。セクシュアルマイノリティへの社会の認知度は上がる一方、まだまだ「イメージ」の中の世界でしかなく、現実の部分は認知されていないともいえるのかもしれない。

同性パートナーシップ制度とは*
法律上の婚姻とは異なるものとして、男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備えた、戸籍上の性別が同じ二者間の社会生活における関係を「パートナーシップ」と定義し、一定の条件を満たした場合にパートナーの関係であることを証明するもの

例)渋谷区の事例
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/est/oowada/partnership.html

 

 

変わり始めたLGBT業界

今までは、「カミングアウトをすること」そのものが大きなプレッシャー・壁になっていたが、徐々にLGBT当事者や業界全体がオープンになり始めてきたそう。例えば、LGBTウェディングやパレードなどについても、当初から活動自体は注目されつつも「目立ちたくない」「あんなのは自分には合わない」と敬遠する人も身近にはたくさんいたそう。しかし、今は「楽しそう」「やってみたい」と気軽に参加する人も増え、そうした肯定的でラフな意見も増えた実感があるという。

TOKYO RAIMBOW PRIDEをはじめとして、フェスのようなイベントでも多くの企業が趣旨に賛同し、NETFLIXや資生堂などの大手企業も続々と参画するようになり始めているそうだ。企業のLGBTに関する取り組みの評価指標である「PRIDE指標」が立ち上がったことも合間って、「むしろ取り組まない方がかっこ悪い」という、そんな空気も流れ始めている。

太田さんは、当事者だからこそわかるその「生きづらさ」と、変わり始めた業界の空気感のもと、体験と環境をヒントとしてやる気あり美の活動を展開させている。変わり続ける環境、変わらない原体験。そうしたものを常に観察し続け、肌感覚と共に自分たちのスタンスを確認し、定める。

楽しく、明るく、グッとくる。チームとしてそんな軸を大切にして表現し続ける「やる気あり美」の活動は、いまや「LGBT」という枠を1段階も2段階も超えて「生きづらさを感じる人」への光となる存在となっている。

 

 

「意味合い」よりも、後からでは付け加えにくい「直感」を


(リズムもダンスも飽きがこない、ずっと聴きたくなるもの)

「意味」はあとからつけられるけど、「楽しい」はなかなかつけられない。楽しいは直感だからこそ、いつも大事にしている――

やる気あり美では、「世の中とLGBTのグッとくる接点をもっと」というコンセプトのもと、様々なイベントやwebでの発信など多岐に渡ったクリエイティブコンテンツを発信している。その中でも今回リリースした「ピー・エス・エス」という曲はとても「やる気あり美らしさ」に溢れ、すぐにでも友達に教えたくなるようなハッピー感の溢れるコンテンツになっている。

 

やる気あり美『ピー・エス・エス』

この「ピー・エス・エス」は、同姓パートナーシップ制度の生誕2周年をお祝いする明るくポップな曲。「同姓パートナーシップ制度」が制度的前進の事例としてばかり取り上げられ、本来この制度がもたらすものの本質であり、さらには当事者たちの本制度申請の動機となるはずの 「社会的承認がもたらす幸福感」が忘れられているのではないか?という彼らの思いが含まれている。

 

僕たちはこの曲で、同性パートナーシップ制度を「意味がある制度」というより、「ハッピーなもの」として印象付けたい――

この制度が「正しいこと」なだけではなく「楽しいこと、幸せなこと」としてもっと広まって欲しい。この曲を通じて、「世の中のハッピーなこと」のひとつとしてこの制度を生活者の記憶に残していきたい。少しでも多くの人が「同姓パートナーシップ制度」と聞いて「いいよね!ハッピーだね!」と思ってくれることを目指したのだと、太田さんは語った。

「ピー・エス・エス」を通してLGBTのための制度、彼らが持つ課題解決のための制度というものではなく、一人一人がよりハッピーに、そして生きやすくなるチャンスとなるこの制度をその本質から捉え直し、限定された人のためでなく、多くの人に関係する「みんなが生きやすくなるため」の社会変化だと表現したように思う。

 

 

それぞれが生きやすい生き方を探り、生きていく

太田さんと一緒に活動するやる気あり美のメンバーも、それぞれとても魅力的な人ばかり。やる気あり美らしさに富んだ豊富なコンテンツはそれぞれ、そんな個性的な「人」によって成り立っているようにみえる。やる気あり美と他団体との違いを聞かれた際にも、太田さんは「人だ」と即答するという。

 

「このノリが好き」と「このノリに合う・このノリを持ってる」は別――

太田さんは、仲間を集める際に「VISIONへの共感や好きなものが一緒かどうか」という基準よりも、「このノリにあってるかどうか」という、数値化・明確化しにくいそのニュアンス・感覚を大切にしていると語る。活動の取り組み方、メンバーの選び方、表現の方法、どれをとっても太田さんはよく言われる”世の中のルール”とは別に「自分がどう感じるか」を大切にしているようにおもう。きっと、「LGBT」というテーマを超えた「人間一人一人」の生き方を見つめているのだろう。

とてもシンプルなだけに忘れがちな、「自分の素直な気持ちに正直に過ごしていく」ということは、気づかぬうちに意思のない選択をとり続け自分らしくあることを忘れることが容易にできてしまうこれからの時代の中で、とても重要かつより人間が人間らしくあれる唯一の手段のようにも感じる。

太田さんは自分だけでなく、多くの生きづらさを感じる人たちにとっても足元を照らす灯台の光のような存在であり、生き抜いていくための大きな知恵を伝えていく存在となるだろう。

 

 

他にも生き抜く知恵の実験室WEELでは動画配信など様々な取り組みを滋賀県長浜市さんと行なっております!ぜひ下の画像をクリックしてご覧ください!

Pocket

人気の記事

Copyright c Disaster prevention girl All rights reserved